2018年1月25日

債権関係の規定に関する改正民法は平成32年(2020)4月1日から施行/ご相談は大阪の社会保険労務士 くぼた労務行政事務所まで!

企業や契約ルールを定める債権関係の規定に関する改正民法は平成29年5月26日に成立しましたが、政府は平成29年12月15日の閣議で、この改正民法を、一部の規定を除き、平成32年(2020年)4月1日から施行すると決定しました。債権関係規定に関する民法の抜本的な見直しは、明治29年(1896年)の民法制定以来、実に約120年ぶりとなります。

 

この間、我が国の社会・経済は、取引量の増大、取引内容の複雑化・高度化、高齢化、情報伝達手段の発展など、様々な面で大きく変化していますので、取引に関する最も基本的なルールを定めている民法の規定を社会・経済の変化に対応させる必要がありました。また、民法が定める基本的なルールの中には、裁判や取引実務で通用していても、条文からは読み取りにくいものが少なくなく、法律の専門家でない国民一般にとって、基本的なルールが分かりにくい状態となっていました。

 

そこで、民法のうち債権関係の規定について、取引社会を支える最も基本的な法的基礎である契約に関する規定を中心に、社会・経済の変化への対応を図るための見直しを行うとともに、民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から実務で通用している基本的なルールを適切に明文化することとしました。改正の項目は、小さなものまで含めると合計200程度です。

 

改正法の主な内容の一つに短期消滅時効の見直しがあります。現行民法では、「債権は、10年間行使しないときは、消滅する」とし、例外として、医師等の診療報酬等は3年、弁護士、公証人の報酬等は2年、飲食料、運送賃等は1年とする職業別短期消滅時効が規定されています。ただし、職業別短期消滅時効には、税理士、公認会計士、司法書士、行政書士、社会保険労務士等の報酬の時効は規定されていないことから原則の10年が適用されています。

 

この職業別短期消滅時効を廃止し、原則「債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間行使しないとき」に一本化されました。5年間としたのは、短期消滅時効が適用されていた債権の時効期間の大幅な長期化を防止するためです。また、当事者間で特に利息を定めていない場合に適用する法定利率は、現在は年5%で固定されていますが、超低金利時代の実勢に合わせて3%に引き下げた上、3年ごとに見直す変動制も導入されました。

 

連帯保証人制度も見直されました。金融機関などが事業用の融資の際に求めてきた連帯保証について、知人や親族などの第三者の個人を保証人とする場合は、公証人による意思確認が必要になります。また、インターネット通販など不特定多数の消費者と同じ内容の取引をする場合に事業者が示す「約款」の規定も新たに設け、これまで判例等で処理されてきた部分を明文化しています。消費者の利益を一方的に害する条項は無効と明記されました。

 

一方で、これまであったルールを明文化したものがあります。例えば、賃貸住宅の退去時の敷金は原則として借り手に返還し、賃貸物件において経年変化で生じた壁紙の傷みや畳の擦れなどの修繕費は貸主側が負担するなどの返還ルールを定めました。そのほか、賃料不払いによる賃借人の契約が解除になると、転借人は退去することや、物件明渡し後1年間は契約違反による賠償請求が可能、などが明文化されています。

 

以上のように、今回の改正は、民法のうち債権関係の規定について、取引社会を支える最も基本的な法的基礎である契約に関する規定を中心に、社会・経済の変化への対応を図るための見直しを行うとともに、民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から実務で通用している基本的なルールを適切に明文化したものとなります。

 

賃金請求権は労働基準法により2年で時効と定められています。

 

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